スペイン語の絵本(ラテンアメリカやスペインの絵本)と日本語の絵本についてと、日常のあれこれをつづります。
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『メキシックー船の名前』スペインの絵本

Mexique

タイトル:メキシック ―船の名前― (Mexique−El nombre del barco)

文:マリア・ホセ・フェラーダ (María José Ferrada )絵:アナ・ペニャス(Ana Penyas)

出版社:2017年 LIBROS DEL ZORRO ROJO 社 

 

※ 『いっぽんのせんとマヌエル』の著者マリア・ホセ・フェラーダさんの最新作絵本です。

 

 

 

概要

1937年、スペイン内戦により共和国はのスペイン人の子どもたち456人は、メキシックという名の船にのり、ボルドーからメキシコのモレリアへ向かいました。当初3、4か月という予定でしたが、結局、故郷へ戻ることができず、亡命者としてメキシコで生きていくことを余儀なくされたのです・・・。戦争の犠牲者として故郷を奪われた子どもたちの運命を描いたノンフィクション絵本。

 

 

あとがき(一部抜粋)

1937年5月27日、共和国のスペイン人の子どもたち456人はメキシックという名の船にのり、メキシコのモレリアへむかいました。当時、国内の町をおそったスペイン内戦から国外へ集団疎開するためでした。3、4か月という当初の予定は、共和国の敗北と第二次世界大戦の始まりにより情勢が急変し、結局、子どもたちは故郷のスペインに戻ることなく「モレリアの子ども」として生きていく道をえらばざるをえなくなりました。

 

 

最初の数年は不安と心配の日がつづき、その後子どもたちは奇異感と理解に苦しみました。モレリアの子どもたちは戦争の痛みとトラウマを抱えています。さらに、その後もずっと彼らを苦しめたのは、 「捨てられた」 という思いでした。

 

 

「どこの国の人ですか?」 その質問には、おそらく彼ら自身も答えられないでしょう。亡命によって、その答えは奪われてしまったのです。モレリアの子どもたちだけでなく、たくさんの子どもたちが戦争という暴力によって国を追われ、助けを求めて故郷を捨てざるをえないのです。船をおりた後に待ちうけていた彼らの人生が、どうか幸せで素晴らしものであったことを、私たちは願うばかりです。

 

この本はある船についての物語です。しかし、人々をのせて日々海をわたるすべての船に記録が残されていいるわけではありません。船でわたる人々は、みんな希望をいだいています。そしてなにより大切なのは、だれもが幸せな人生をおくる権利があるということです。

 

 

■ 作者について

文:マリア・ホセ・フェラーダ (María José Ferrada) 

 

1977年、チリのテムコ生まれ。ジャーナリスト、作家。子ども向けの本を多く手がけ、作品はさまざまな国で出版されている。日本と日本文学が大好きで、スペインのバルセロナ大学アジア太平洋研究科修士課程を修了、源氏物語のスペイン語翻訳に関する論文を執筆した。チリ言語アカデミー賞、オリウエラ市子どものための詩賞など受賞歴多数。チリ軍事政権下で連れ去られ行方不明になった子どもたちへ捧げた本『こどもたち』は、2016年国際児童図書評議会(IBBY)オナーリストにも選ばれた。また2017年には、『庭』が、ボローニャ・ラガッツィ賞特別賞を受賞。邦訳作品には、『いっぽんのせんとマヌエル(偕成社)』が、2017年に出版された。

 

 

絵:アナ・ペニャス (Ana・Penyas)

 

1987年、スペインのバレンシア生まれ。バレンシア工科大学で美術を専攻し工業デザインを学ぶ。2015年イベロアメリカイラスト特別賞、2016年イベロアメリカ・イラストカタログ最優秀賞を受賞。2017年、フナックーサラマンドラグラフィック国際小説賞受賞。2018年イタリア・ボローニャ国際絵本原画展入選

 

 

 

 

おはなしの一部

 

 

夜、目をつむると、波に うたれているみたいだ。

 

波は 船に なにかいおうとしてるんだと思う。

 

―メキシック―、それが船のなまえ。

 

波は そのことを 知ってるの?

 

海は どんな船のなまえも ぜんぶ おぼえてるの?

 

 

 

どの国に むかっているのか、よく おぼえてない。

 

 

けれど、すごく とおいところ。

 

3、4か月ぐらい。 

 

「ちょっと ながいお休みのようなものよ。」 母さんは いった。

 

さよならするとき、母さんったら、ぼくのこと 「わたしの ぼうや」ってよんだ。

 

 

....

 

 

 

戦争は とてつもなく 大きな音だ。

 

戦争は 巨大な手で きみをひとつかみして、船のなかに ほおりこむ。

 

 

 

......

 

 

 

 

 

人の波のなか、ぼくは じぶんのカバンを しっかり つかんだ。

 

(カバンは ぼくのふるさとのいちぶ、家のようなもの。)

 

人波のなか、ぼくは クララの手を うしなった。

 

前にすすむんだ。戦争は もう すんだこと。

 

でも、ほんとうは ちがう。戦争は カバンのなかに もってきた。

 

| 21:28 | スペイン語の本 Libros españoles | comments(0) | trackbacks(0) |









 
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