スペイン語の絵本(ラテンアメリカやスペインの絵本)と日本語の絵本についてと、日常のあれこれをつづります。
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おひめさま、したくはできましたか?ーアルゼンチンの絵本ー
 

■ 原書の情報

タイトル: ¿ Esta’lista la princesa ?

仮題:おひめさま、したくはできましたか?

発行年:2005

出版社:  アトランティダ社(Editorial Atlántida

 

・ 2007411日 アルゼンチン児童文学雑誌 『イマヒナリア(Imgaginaria)』 春の推薦図書

 

作者

文: グラシエラ・レプン(Graciela Repún) / フロレンシア・エッセ( Florencia Esses

絵: バレリア・シス(Valeria Cis

 

 

■ あらすじ

朝、おひめさまは目がさめると、お風呂に入り、髪の毛をとかし、ドレスをえらび、靴をはき、朝ごはんをたべ、冠をきめて…といったすべての支度をととのえなければなりません。けれど、おひめさまはじぶんでは何もしません。お城に仕える人々が、すべて身のまわりのお世話をしていきます。そのあいだ、おひめさまの表情はしずんだまま…。

 

おひめさまの支度が進んでいくにつれ、各ページの右側には聖歌隊の男性コーラスが本のタイトルと同じように「おひめさま、したくはできましたか?」と問いかけ、「まだ〜」という答えがくりかえされていきます。そのたびに聖歌隊と冠の数が増えていき、聖歌隊が10人になるとおひめさまのしたくが整うのです。そこで今度は、今までとちょっとちがった質問が投げかけられます。「でも、なぜ おひめさまは、したくをするのでしょうか?」 次のページをめくると、だれもがその答えに笑みがこぼれるにちがいありません。その答えは…「もちろん、おひめさまじゃなくなるため!」だからです。

             

おひめさまが、おひめさまでなくなったとき、そこには階級も位も存在しません。ふつうの女の子となって、ようやく笑顔でみんな一緒に輪になりながら楽しくおどることができるのです。 (対象:小学校低学年から)

 

 

■ この絵本を読むときのワンポイントアドバイス

児童文学の紹介と情報サイト 『ふくろうのボーと本たち(EL BUHO BOO y sus libros )』より要約

 

各々のページの絵をゆっくり見せてあげて下さい。絵には様々なアイテムが詳細に描かれています。それぞれ指で絵を示しながら名前を言ったり、どれが好きかなど話しあうとよいでしょう。

 

おひめさまだけでなく、いろいろなキャラクターが登場します。カエル、ネコ、イヌ、カメ、トリ、ネズミ、サカナ…それぞれ何をしているか一緒に絵を楽しみながら話しあってみましょう。

 

「おひめさま、したくはできましたか?」と問いかけると、「まだ〜」という答えがくりかえされていきます。ページをめくるごとに、子どもと一緒にくりかえしのやりとりを楽しんでください。

 

聖歌隊が「おひめさま、したくはできましたか?」と質問するたびに、その人数がひとりずつ増えていきます。ページを追うごとに、何人いるか子どもに数をかぞえさせながら一緒に楽しみましょう。

 

絵本には、かんむりの形をした「しおり」がついています。好きなページをたずねて、しおりをはさんでみてください。小さいころから、しおりをはさむ習慣を身につけさせましょう。

 

 

■ 書評

アルゼンチンの出版社エテルナ・カデンシア社2010129日掲載の記事より 

 

―なぜ おひめさまは、したくをするのでしょうか?―

単純な質問だけれど、女性がモノのように扱われる掟をきっと打ち破ってくれるでしょう

 

おひめさまでいるのも、なかなか大変です。それは貴族の爵位や位の授与に関することではありません。ティアラをつけたり、うやうやしくお辞儀をしたり、夜中の12時に階段でガラスの靴をなくしてしまうことでもありません。

おひめさまでいることは、つまり、それを態度で示すことなのです。

 

絵本『おひめさま、したくはできましたか?』では、作家グラシエラ・レプンとフロレンシア・エッセが、幼少期から必然となっている社会の掟を打ち破ります。おとぎ話には常にダークサイドが存在し、驚くべき発見があるものです。バラ色の人生など最終的にはありえない。もしそうなったら、私たちは人生の大切な部分を失いつつあるということなのですから。

 

朝になり、お城でおひめさまが目を覚まします。儀式的な現実の朝の始まりです。宮殿に仕えるたくさんの人々がおひめさまの支度をととのえていきます。バラの香りのお風呂、おいしそうなスイーツがたくさん用意された朝食…。なにより興味深いのは、ドレスと靴をえらぶ場面でしょう。

 

実際に姪っ子2人に読み聞かせてみたところ、おひめさまのドレスをえらぶシーンに「ふぅ〜」とため息がこぼれおちました。バレリア・シスのイラストは、詳細に描かれていてとても美しいのです。また、各ページの右側にいる男性コーラスが「おひめさま、したくはできましたか?」という質問に「まだ〜」という答えがくりかえされていくのですが、子どもたちはこのくりかえしが楽しくて仕方がないようです。

 

こうして長い時間をかけて、おひめさまのしたくがととのっていきます。

 

バービー人形のカラフルな世界が市場で明らかに人気が高いのは、女の子ならだれしもおひめさま願望があるからでしょう。時に、大人の女性ですらかわいらしいグッズや商品に魅せられて、ついおもちゃ屋に長居してしまったり、小さな子に付き添うという名目で、ファンタジー映画を一緒に楽しんだりしているものです。

 

さて、ついにおひめさまは支度が完了し、世話人たちの仕事も一段落、美しいおひめさまのできあがりです。すると今度は男性コーラス陣から、興味深い質問がされます。「でも、なぜ おひめさまは、したくをするのでしょうか?」

 

姪っ子たちは、驚いた顔でしばらく黙ったまま考えていました。そこで、もう一度前のページをじっくり見せていくと、それぞれ自分たちなりの答えを出してくれました。おひめさまの態度や詳細なイラストの中には、さまざまな答えが隠されているようです。おひめさまは、みんな同じというわけではないようです。

 

なぜか、この本は私の心に深く残る一冊となりました。一方、子どもたちにとっても何か思うところがあったのでしょう。もう一度読んでほしいとお願いされ、再びくりかえしのやりとりを楽しみ、自分たちでも違うドレスや靴をえらび、おひめさまごっこをしました。そして本を読み終えると、今度は着ていた衣装を脱ぎすて、結っていた髪をほどき、外へ出てボール蹴りをし、芝生に寝転びました。

 

おひめさまでなくなることも、人生の一部なのです。 そこから、現実の理想の男性がいることを教えていく役割を、私たちは担っているのかもしれません。時に、その理想はあまりに具体的過ぎてしまうこともあるかもしれませんが、運よく本当に理想どおりの男性に出会えるかもしれないのです。

 

■ 作者について:

文:グラシエラ・ベアトリス・レプン(Graciela Beatriz Repún

作家。アルゼンチンのブエノス・アイレス生まれ。児童書だけでなく、小説、脚本、伝記、詩なども手掛け、100冊以上の本が出版されており、ラテンアメリカだけなくヨーロッパ諸国でも刊行されている。

 

主な作品と受賞

『アルゼンチンの伝説(Leyendas Argentinas)』 2002年ホワイトレイブンズ選定

『海は人魚でいっぱい(El mar está lleno de sirenas)』2004

『シラミにきをつけて―詩といっしょ―(Ojo al piojo con estas Coplas)』 2000年ファンタジー賞 詩の部門受賞

『シラミにきをつけて―なぞなぞと早口ことば―(Ojo al piojo con estas Adivinanzas y Trabalenguas)』2000年ファンタジー賞 詩の部門受賞

『その家のうしろにいるのはだれ?(¿Quién está detrás de esa casa?)』 2004年パリ国際児童文学研究センターよりオクタゴン賞受賞

 

文:フロレンシア・エッセ(Florencia Esses

1973年、アルゼンチンのブエノスアイレス生まれ。学校で読書推進担当として働く他、ブエノスアイレス市の様々なプログラムに参加する。作家グラシエラ・レプンの生徒として共同で『おひめさま、したくはできましたか?』の他、『王子さまはどこへいるの?』、『ちょっとまって!』の3作品も同様に共同で執筆を手掛ける。これ以外にも、なぞなぞや早口言葉の絵本等も多く手掛けている。

 

絵:バレリア・シス(Valeria Cis

アルゼンチンのロサリオ生まれ。アクリル画を主体に身の回りにある日常を多く描いている。子ども向けの絵本を中心にアルゼンチンだけでなくアメリカやスペイン、イギリス、韓国などでも活躍している。(ホームページ:http://www.valeriacis.com/

 

主なイラスト作品(いずれも未邦訳)

2004  

『シャケと漁師マルティンの伝説(Leyenda del salmón y el martín pescador)』 Sudamericana社(アルゼンチン)
2005 
 

『おひめさま、したくはできましたか?(¿Está lista la princesa?)』アトランティダ社

『ロベルタ えをかく(Roberta dibuja)』SM (アルゼンチン) 
2006 
 

『漁師ぺピン(Pepín pescador)』Atlántida(アルゼンチン) 

『アフリカの王子(El príncipe de África)』Palabra (スペイン) 

『ウマワカの牛(La vaca de Humahuaca)』Alfaguara (アルゼンチン)
『王子さま、どこへいくのですか?(¿A dónde va el príncipe?)』Atlántida (アルゼンチン) 
『ちょっとまって!(Un ratito mas)』Atlántida (アルゼンチン) 

『ベロニカがあみものをすると(Cuando Veronica teje)』Sudamericana社(アルゼンチン)
2007  

『ママはまほうつかい(Mamá maga)』SM (アルゼンチン) 
『僕は消防士(Yo soy un bombero)』Emecé社(アルゼンチン)
『ハチおとこ(The Beeman)』Barefoot Books (アメリカ) 
『3びきのゆうかんなアリ(Tres hormigas valientes)』Emecé社(アルゼンチン). 
2008 
 

『やさいをたべない10のいいわけ(Diez Excusas para no comer vegetales)』Sudamericana(アルゼンチン) 
『絵ふでと紙(Pincel y papel)』Abrancancha社(アルゼンチン)
2009
  

『ファナ、どこにいあるの?(Juana ¿donde estas?)』SM(アルゼンチン)
『おとなになったら、なにになる?(What will I be when I grow up)』Harvest House. (アメリカ) 

2010  

『ふたつのペサハの物語(A tale of two seders)』Kar-Ben Publishing (USA)

『アマゾンからのともだち(A friend from the Amazon)』Kyowon社(韓国)

 

 

■ 所感

おひめさま絵本の特集が組まれるほど、おひめさまの絵本は女の子に人気があります。でも、この絵本はおひめさま願望を満たしてくれる終わり方ではなく、「おひめさま」であることをやめた時にこそ本来の「自分」になるのだということを、言葉ではなくイラストの中から感じ取れる作品であるように思います。この絵本には、たくさんしかけが組み込まれていて、くりかえしのやりとりや数の変化、キャラクターの動作など子どもと一緒に楽しく遊びながら読みすすめることができるようになっています。

 

作家のグラシエラ・レプンは、あるインタビューで「お話を書くことは恋するようなものだ」と語っています。この絵本についても共同執筆したフロレンシアとの間で、絵で表現するために言葉をけずっていく作業で何度も話し合いを重ね、「作家でいるのも、簡単なことではない」と認めています。さらに、イラストレーターのバレリア・シスに、彼女が辟易するほど詳細にキャラクターの指示を出していったことや、特に、おひめさま以外の鳥、魚、カエル等12のキャラクターを指定し、何度もいったりきたりのやりとりをしながら、ようやく一つの作品に仕上げたことを述べています。一見、言葉が限りなく少ないシンプルな絵本に見えますが、そこにはベテランと新鋭の作家のやりとりや、作家とイラストレーターのやりとりなど、様々なぶつかり合いがあり、切磋琢磨しながら納得のいく作品を仕上げていったという経緯があるようです。それゆえに2005年の出版後も、2007年の推薦図書に選定されたり、2010年の出版社のブログ記事に掲載されたり等、長く愛される作品になっているのかもしれません。

 

おひめさまの支度がすべてととのい、くりかえしの遊びも終了になった時、「なぜ おひめさまは、したくをするのでしょうか?」といった質問の場面では、きっと子どもたちから様々な答えが出されるでしょう。「散歩にいくため」、「遊びにいくため」、「ダンスにいくため」、「お芝居にいくため」、「王子さまに出会うため」、「結婚するため」…。けれど「おひめさまじゃなくなったとき」こそ、満面の笑顔でうれしそうに遊ぶ本当のおひめさまの姿になれるのだという結末に、読者はだれもが納得するに違いありません。そこには階級は存在しません。みんなが輪になって(動物もいっしょに)楽しそうにあそぶ最後のページが何より楽しい結末になっています。

 

 

■ 試訳

 

おひめさま、おはようございます。

もう、あさなの?まだ、ねむいのに…。

 

おひめさま、すばらしいあさですよ!

さあ、おきるじかんです。

 

おひめさま、したくはできましたか?

まだ〜!

 

すみれのかおりのおふろはいかが?

ジャスミン?それとも、バラがおすきですか?

 

おひめさま、したくはできましたか?

まだ〜!

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

さあ、できた!

おひめさま、したくがととのいました!

でも、なぜ おひめさまは、したくをするのでしょうか?<

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くもを売る少女 ―メキシコの絵本ー
 

原題:La Vendedora de nubes

仮題:くもを売る少女

発行年:2009

出版社:2009年 プラネタ メヒカナ社: Editorial Planeta Mexicana 

(Diana出版社の承認の下)

 

作者

文: エレナ
・ポニアトウスカ(Elena Poniatowska Amor

: ラファエル・バラーハス(ペンネーム:エル・フィスゴン)(Rafael Barajas, El Fisgo'n

 



くもは一生の友だちになれる?

―少女のみた夢がほんとうになった― 
ほそい糸にひかれて、少女のうしろをついていく美しいくも。少女は夜になると、くもをびんの中に大切にしまう。くもはちぢまると、水のつぶになるから。ある朝のこと、少女はまずしい生活をささえるために、くもを売りに市場へいった…。自然の恵みと友情をえがいた、ラテンアメリカの偉大な女流作家がおくる心温まるストーリー。  
(読者対象:小学校中学年から)



■ メキシコの日刊紙 『El Informador(エル・インフォルマドール)』 
20091116日掲載記事一部要約

メキシコの著名な女流作家エレナ・ポニアトウスカ(Elena Poniatowska)がメキシコシティで開催される国際ブックフェアの参加に先がけ、『くもを売る少女』を紹介した。

・・・

―中略―

ポニアトウスカによると、この話は彼女の知り合いの女性の子どもが、母親にたずねた素朴な質問がきっかけとなって誕生したという。

 「この話は少女が母親に“どうしてくもは、売れないの?”と質問したところから生まれました。執筆することは、常に人々の関心からはじまるべきなのです」。

・・・

―中略―

また、今回イラストを担当した風刺画家エル・フィスゴンは、『くもを売る少女』について、次のように述べた。「今まで担当した本の中で最も美しい作品の一つだ。空想的で現実的でもあり、実にすばらしい。彼女は「高貴」という言葉を、「寛容」、「善良」、「人々との共感」という同義語にあてはめて理解する人物だ。そして、それは彼女の作品に表れている。メキシコで最も愛されている知識人の一人である今回の彼女の作品は、国民に最も愛される話になるだろう」



■ あらすじ

ほそい糸にひかれて、少女のうしろをついていく美しいくも。少女は夜になると、くもをびんの中に大切にしまいます。くもはちぢまると、水のつぶになるから…。ある朝のこと、少女はまずしい生活をささえるために、くもを売りに市場へいきました。

 

市場で、少女にまず声をかけたのは弁護士でした。弁護士は、くもはだれのものでもないから売れないと、少女に言い聞かせます。次に、お金持ちの婦人は、外国製品でないものは価値がないと不満そうに顔をしかめます。それから、くもを選挙運動に使おうとする政治家、戦争に利用しようとする軍人、研究材料にしようとする科学者…。そこへ、子どもの頃くもを持っていたことがあるという旅人に出会います。けれど、少女はついに通りがかりの工員にくもを売ってしまうのです。

 

くもをおくりだした後、少女の目からなみだがこぼれおちました。旅人は「そんなに、だいじなものをなぜ売ってしまったんだい?」と、残念そうに少女にたずねます。科学者もやってきて「なにより大事なのは、今、手にしたお金よりも、くもと楽しむことなのよ」と伝えます。夜になっても、少女の涙はとまりません。

 

ところが、気むずかしいくもに嫌気がさして、工員がくもを返しにもどってきました。少女はくもに無理強いさせてしまったことを心から後悔します。すると、くもが少女の足もとまで、ゆっくりとおりてきました。旅人は、少女を旅にさそいます。「夢みることは、旅するようなもの。いっしょに夢をみよう」。くもはわたのうでをひろげて少女と旅人つつむと、星あかりの地平線のかなたにきえていきました。


■ 感想

小さい頃、だれでも一度はくもを綿菓子に見たてて、食べてみたいと思ったことがあるかもしれません。しかし空腹のために「くもが食べられたらなあ」と口に出したり、貧しい生活を支えるためにくもを売ろうと思うことは、今の日本ではほとんどないでしょう。

 

これは決して大げさなのではなく、現代のラテンアメリカの貧困の一部を垣間見る日常なのかもしれません。主人公の少女は子どもにしてはずいぶんしっかりとしていて大人びて見えるのですが、そこには、そうせざるえない事情を抱えているからなのかもしれません。

 

本来子どもは、もし、くもが自分にだけなついてくれたら、うれしくて、くもと楽しむことしか考えないでしょう。しかしこのお話では、そんな子どもの思いを大人に言わせています。「なにより大事なのは、今、持っているお金ではなくて、くもと楽しむことなのよ」と。そこで、少女ようやく気づくのです。なんてバカなことをしてしまったのだろう…。

 

少女に話しかける弁護士や政治家、軍人や科学者などのやりとりを通じて、お金や権力のある大人が中心の現実を描きながら、それでも理不尽な扱いに負けることなく、夢をもつ大切さを問いかけています。そのキーマンとなる人物を、社会的弱者であるマイノリティな存在の旅人が担っています。

 

作者のポニアトウスカ女史の自宅には、学生運動家、労働者、解雇された女工、行方不明者となった我が子の消息を追い悲嘆に暮れる母親など、日々様々な人が相談に訪れているそうです。社会の底辺に眼を向けた彼女の仕事ぶりは、メキシコの人々の信頼と喝采の的となっています。



■ 作者について

文:エレナ・ポニアトウスカ(Elena Poniatowska Amor

『トラテロルコの夜(藤原書店2005年)』より要約・抜粋

「メキシコで最も敬愛され、欧米でも高い評価を得ているジャーナリスト兼作家。ポーランド最後の国王の末裔として、1932年パリに生まれる。1942年、9歳の時に母方の国メキシコへ移住。以来、社会的に弱者とされる人々と深いかかわりを持つようになる。(祖母の屋敷に使える家事使用人との交流でスペイン語を学ぶ。ガールスカウトに入隊し、貧困地区の奉仕活動に従事。その後、米国の修道院付付属学校に学び、無垢な人々の篤い信仰心を敬うようになる)。 学業を終えた1953年、メキシコの有力日刊紙の記者としてジャーナリズムの世界に入り、以来半世紀余り独自のインタビューとルポルタージュの手法を通じてノンフィクションとフィクションの間を自由に往還しながら、現代メキシコの知的文化と大衆文化双方の価値と問題を描きだしてきた。79年、メキシコで女性初の「全国ジャーナリズム賞」を受賞。」



作者のインタビュー 『トラテロルコの夜(藤原書店2005年)』 より引用)

「私は何事にも好奇心が旺盛だけれど、より強く惹かれるのは貧しい人々です。その声こそ、私に養分を与えてくれました。彼らの悲喜こもごもを綴るのが私の社会的使命だと思っているのではありません。彼らに与えられる以上のものを私は彼らから受けとっているのですから」



 作品歴及び受賞歴

1954年 『リルス・キクス(Lilus Kikus)』

1969年 『生き抜いて(Hasta no verte Jesu' mi'o』メキシコ屈指の文学賞マサトラン賞受賞

1971年 『トラトラテロルコの夜(La noche de Tlatelolco』ハビエル・ビジャウルティア賞 

1980年 『沈黙は強し(Fuerte es el silencio)』

1985年 『何も、誰も(Nada, nadie)』

1992年 『ティニシマ(Tini'sima』 マサトラン賞受賞

2001年 『天空の牡牛(La piel del cielo)』アルファグラ賞受賞

2007年 『列車は先に通過する(El tren pasa primero)』ロムロ・ガジェゴ賞受賞

その他50点を越える著書があり、様々な言語に翻訳出版されている。

 

邦訳作品

トラテロルコの夜:メキシコの1968年(藤原書店)

 


絵: ラファエル・バラーハス(ペンネーム:エル・フィスゴン)

Rafael Barajas, El Fisgo'n

1956年メキシコ・シティ生まれ。風刺画家、建築家、作家。メキシコの大手日刊紙「ラ・ホルナーダ(La Jornada)」で風刺画を担当。“エル・フィスゴン(el Fisgo'n、「のぞきや」の意味)”のペンネームで知られる。主な作品(いずれも未邦訳)に 『So'lo me ri'o cuando me duele (つらい時は、ただ笑う)』、『La bola de la independencia(独立への偉業)』、『Co'mo la hacen de Pemex (ぺメックスからどうやってつくられるのか』等、多数。ジャーナリズムの世界で活躍する他、子どもの本のイラストも手がけている。


 

受賞歴

若手ジャーナリズム・ヤングマヌエル賞

記者クラブによるコンスタンティノ・エスカランテ賞

全国ジャーナリズム賞

国際ブックフェア2010ラ · カトリーナ賞





 ■ おはなしの一部 

市場には、やきトウモロコシ、タマネギ、コリアンダー、山でとれた たくさんのハーブのかおりが まじりあっています。なんて いいにおいでしょう。市場のもの売りたちは、いろいろなやさいやくだものを店さきにならべています。山づみになったオレンジ、どっしりとしたスイカ、とれたてのトウガラシのピラミッド、たくさんのカボチャのたね。

 

品物がいっぱいの店がならぶ中、ひとつだけ からっぽの店がありました。かごも、いすもなければ、ハエたちをよびよせる マンゴーのあまいしるのあともありません。ところが、ビニールのしきものの上には、少女がひとりぽつんと立っていました。

 

「やあ、おじょうちゃん。いったい、なにを売っているのかね?」

「わたし?このくもです」

「どのくもだって?」

「その上にあるくも」

「どこにだって?」

「ほら、この上。見えない?」

 

 

     ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「くもをほしい人はいませんか?くもを買いませんか?

スモッグなしの、とっても きれいなくもですよ」

 

しばらくすると、少女はつかれきってしまい、つい口にだしてしまいました。

「ああ、おなかすいた!せめて、くものかけらでも食べられたらなあ!」

その声をきいた軍人が、少女に はなしかけてきました。

「おじょうさん、なにをぶつぶついっているんだね?」

「くもと、はなしてるんです。いかがですか?このくもをお売りします。ほんものの くもなんです」

「むむ…!くもか…。かんがえたこともなかったが、わたしの飛行機をかくすのに やくだつかもしれん。まさか、くもの中にいるとは、だれも思わんだろう…。きみのくもは、命令にしたがうかね?」

 

 

     ・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「この人のいうとおりよ。できることならわたしだってしりたいわ。どうしたら、くものゆめを見れるのか。なぜ主人にしたがう子イヌみたいに、くもはあなたのあとをついてくるのか。だれにもおきないようなことが、なぜあなたにだけおこったのか。でもね、そんなことよりもたいせつなのは、いま手にした7ドル75セントより、くもとたのしむほうがずっとだいじだってことなのよ」

 

少女は、また なきだしてしまいました。

くもを手ばなしてしまったことが、世界一かなしいできごとに思えました。

夜になっても、なみだはとまりません。

少女のまわりに、なみだの水たまりがひろがっていきました…。

 

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ジャガイモ、トマト、トウモロコシ、世界で愛される野菜のひみつ ―チリの絵本―
 

ジャガイモ、トマト、トウモロコシ、世界で愛される野菜のひみつ

―南アメリカ原産の野菜史とレシピ―

 

■ 原題: Sabor de America

 

2010ボローニャブックフェアのホワイトレイブン(ミュンヘン国際児童図書館の優良図書)

2010年 チリ図書会議所出版賞

 

■ 出版社: La editorial Amanuta (アマヌタ社) <南米チリの子ども向け出版社>

■ 発行年: 2009

 


マクロビオティックが流行して以来、野菜が主食のレストランもあるほど、野菜は見直されています。その流れにともない、野菜の料理本や野菜の植物誌および歴史を知る本もたくさん出版されました。また、子どもの世界でも「食育」という言葉が多く使われるようになり、食の大切さを伝えようとする動きが出ています。

 

今回のご紹介するのは、南アメリカ原産のジャガイモ、トマト、トウモロコシ、トウガラシ、ピーナッツ、カカオ、ピーナッツ、その他10種類の野菜や果物を取りあげて、エピソードを交えて子ども向けに紹介した野菜の起源を知る絵本です

 

上記の野菜はだれもが知っている身近な野菜ですが、その起源や歴史は実はあまり知られていません。ラテンアメリカ原産の野菜にまつわるエピソードを通じて、身近な野菜の歴史を知るとともに、世界史および食育に興味をもってもらえそうな絵本です。子どもがつくれるかんたんな料理のレシピも掲載しています。 (対象年齢:小学校高学年〜)

 

■ 作者について

文: アナ・マリア・パベス(Ana María Pavez)

2001年、子ども向け出版社、アマヌタ社を設立。以後、子供向けの絵本を通じて先住民の文化の伝承、継承を発展させるための教育活動に従事している。今までに携わってきた先住民の暮らしに関する絵本は、編集等含め18冊にのぼる。さらに、プレ・コロンビアン・アート・チリ博物館でコンサルタントとして活躍する他、マヤ、ケチュアの神話をベースにしたアニメーション作品を制作。エール大学で考古学の博士号を取得。チリのサンティアゴ在住。

 

コンスタンサ・レカルト(Constanza Recart

小児精神科医。先住民文化の継承・伝承に興味があり、それが子どものアイデンティティーの確立および形成に大事なテーマであると考え、友人のアナ・マリア・パベスとともにアマヌタ社を設立。精神科医として子どもの世界に詳しいことから、先住民の文化および社会的遺産の知識を持つパベス女史と共同で多くの作品を執筆している。

 

上記作者が共著で手掛けた主な作品(いずれも未邦訳)

キワラシリーズ (文:アナ・マリア・パベス、コンスタンサ・リカルト 絵:パロマ・バルディビア)

『火の石(Piedras de Fuego)』(2003年)

『キツネのかけごと(Las Apuestas del Zorro)』(2005年)

『南の世界のイルカたち(Los Delfines del Sur del Mundo)』2005

『プロモ山の子ども(El niño del Plomo)』2006年 他多数

 

イラスト:イサベル・オーハス(Isabel Hojas

1977年、チリのサンティアゴ生まれ。チリカトリック大学で造形美術を専攻。以後、主に、子ども向け絵本のイラストレーターとして活躍中。

 

イラスト担当作品:いずれも未邦訳

『マルガリータ(Margarita)』2006

『金のなみだ(Lágrimas de oro2007

『旅する詩人ガブリエラ・ミストラル(Gabriela, la poeta viajera)』2007

『ジェイミー・ボトンの大冒険(El insólito viaje de Jemmy Button)』2008年 他多数

 

     あらすじ

 .肇Εラシ

トウガラシは、スペイン語で「チレ」または「アヒ」とよばれるトウガラシ科の植物です。ラテンアメリカ原産で、大きさ、色、辛さなどさまざまな種類があります。はじめてトウガラシを広めた人物は、新大陸を発見したクリストファー・コロンブスでした。コロンブスはトウガラシを見つけたとき、これを「インドのコショウ」とかんちがいしてしまいました。トウガラシはメキシコの先住民の間で治療薬や、敵から身を守る手段にも使われていました。

 

紹介レシピ:ぺブレ 

 

◆.カオ

カカオ(Theobroma cacao)はアオギリ科の木で、木の幹に花が咲き実をむすびます。カカオの実には、白い果実と約60つぶの豆が入っています。そしてカカオ豆が加工されると、チョコレートになるのです。中央アメリカの先住民であるマヤ族の間では、カカオは王家の飲み物でした。しかし、やがてヨーロッパへ持ちこまれ、はちみつや砂糖をチョコレートに加えて飲むようになりました。また、メキシコのアステカ族の人々は、カカオの種を通貨として使用していたのです。

 

紹介レシピ:ピーナッツ入りクランチチョコレート

 

 ピーナッツ

落花生、別名ピーナッツ(Arachis hypogaea)は、長さは3050のマメ科の一年草です。花が咲いた後、実になる部分が土に向かってどんどん伸び、土の中にささります。ささった先が土の中でふくらみ、さやができます。そのさやの中で育つ豆がピーナッツです。ピーナッツは南アメリカ原産で、ボリビアの低地では、約5千年以上も前から栽培されていました。しかし、ピーナッツを南アメリカで食べ物として広めたのは、植民地時代に奴隷として連れてこられたアフリカの人々だったと言われています。また、ペルーの北部のシパン王の墓には、ピーナッツの形をした金の首輪が装飾品として発見されました。

 

紹介料理:ピーナッツパスタ

 

ぁ.丱縫

バニラ(Vanilla planifolia)はメキシコ原産のラン科の植物で、バニラビーンズと呼ばれる豆のような果実をつけます。果実からとった香料は、デザートや飲み物の香りづけに使われています。メキシコの先住民、アステカ族の人々は、バニラを花とかんちがいして「黒い花」と呼んでいました。15世紀までは、ハチドリやハチによって受粉が行われていましたが、1841年以降、フランス人によって人工授粉が行われるようになりました。スペイン人は、チョコレート(カカオ)といっしょにバニラをヨーロッパに持ちかえりました。とくべつな栽培方法でいろいろな香りをつくりだしたため、バニラは「神秘の植物」とよばれていたのです。


紹介レシピ:バニラ風味のビスケット

 

ァ.ぅ船

イチゴ(Fragaria ananassa)は、赤く熟した香りのよい果実を食用とする植物で、さまざまな種類があります。ふつうイチゴといえば、オランダイチゴ(ストロベリー)のことをさします。原産地は南アメリカのチリですが、オランダイチゴ(ストロベリー)は、北アメリカ原産のイチゴとの交配によって生まれました。

 

紹介レシピ:イチゴシェイクとイチゴアイス

 

Α.▲椒

アボガド(Persea americana)は、約9千年前からメキシコで食べられてきた果物です。スペイン人たちは、洋ナシに似ていたことから「インドのナシ」と名づけました。彼らは、アボガドに砂糖や塩をつけて食べたり、デザートとして洋ナシのように皮をむいて食べたりしていたのです。

 

紹介レシピ:ワカモ―レ

 

А.肇Ε皀蹈灰

トウモロコシ(Zea mays)は、中央アメリカや南アメリカのアンデス地方の村で主食としてたべられていました。コロンブスがヨーロッパに持ちかえり、1498年には、すでにスペインで栽培されていたことが記録に残されています。トウモロコシはゆでたり焼いたりして食べたり、細かく砕いて粉にしてパンケーキ(トルティーヤ)をつくったり、発酵させてお酒にしたりしていました。

 

紹介レシピ:コーンサラダ

 

─.劵泪錺

ヒマワリ(Helianthus annum)は、太陽のある方を向き、その動きにつれて回る植物と言われ、北アメリカ西部とメキシコ北部で5千年前から栽培されていました。使用方法は様々で、食用や薬用としてだけでなく、儀式用としても栽培されていました。ヒマワリの種にはビタミンEとミネラルがたっぷり含まれています。そのため油やお菓子に使われたり、そのまま炒って食べることもできます。

 

紹介レシピ:ヒマワリの種ドレッシング

 

 チリモヤ

チリモヤ(Annona cherimola)は、南アメリカのペルーやエクアドルが原産の果物です。うすい緑色の皮の中には白い果肉があり、やわらかくとても甘い味がします。ちょうど、パイナップルとマンゴーとイチゴをまぜ合わせたような味だとも言われています。多くの食べ物をヨーロッパにもちこんだスペイン人によると、チリモヤは南アメリカ原産の食材の中で一番おいしいと言われていました。

 

紹介レシピ:チリモヤ・アレグレ

 

 カボチャ

カボチャ(Cucurbita)はウリ科の野菜で、約8千〜1万年前にメキシコで栽培されはじめました。カボチャには、じつにさまざまな種類があり、なかには食べられないものもあります。また、南アメリカでは、昔はカボチャの果肉だけでなく種や花も食べられていました。カボチャは世界一大きな実をつけることから、この大きさを競うカボチャコンテストが世界各地で行われています。600キロ以上もする重さのカボチャが、たくさん出ているのです。

 

紹介レシピ:パンプキンマフィン

 

 トマト

トマト(Solanum lycopersicum)は、南アメリカ原産の野菜です。メキシコのアステカ族は、トウガラシの辛さを弱めるためにトマトをまぜて料理していました。今では、トマトはイタリア料理には欠かせない食材ですが、初めのころヨーロッパでは、食べ過ぎると体に毒だと思われ、長い間受け入れられませんでした。初めてトマトの種が発見されたのは約9千年前で、ぺルーの墓で発見されました。アンデス地方で見つかったトマトは、種が小さく野生植物でしたが、後に中央アメリカへ持ちこまれ栽培されるようになり、現在の大きさのトマトができたと言われています。

 

紹介レシピ:トマトとモッアレラサラダ

 

 じゃがいも

じゃがいも(Solanum tuberosum)は、南アメリカ原産の塊根(養分を蓄えて大きくなった根)植物の野菜です。約1万年前、ぺルーやボリビアの標高4千メートルのアンデス高地で栽培されていました。じゃがいもの種類は約25百以上もあり、色も白、オレンジ、黄、紫とさまざまです。じゃがいもは、ヨーロッパで受け入れられるようになるまで長い年月がかかりましたが、徐々に広まっていき欠かせない食材となりました。また18世紀には、フランスの王妃マリー・アントワネットが髪にジャガイモの花を飾りにつけたことから、ジャガイモの花飾りが流行しました。

 

紹介レシピ:ポテトのオーブン焼き

 

 パイナップル、サボテン、パパイヤ

パイナップル(Ananas coosus)、サボテン(Opuntia ficus-indica)、パパイヤ(Carica papaya)、これらはすべて熱帯アメリカ原産の果物です。どれも色や形がめずらしい果物ですが、その味と香りのすばらしさは、たちまちヨーロッパ人たちを魅了しました。

 

紹介レシピ:ミックスフルーツの砂糖づけ

 

 キヌア

キヌア(Chenopodium quinoa)は、プロテインや炭水化物を多く含む穀物です。原産地はチリ、ぺルー、ボリビア、コロンビア、エクアドルです。アンデス地方の人々は、5千年も前からキヌアを栽培していました。インカ時代、キヌアは「聖なる種」として、「生命の源」や「母なる種」と呼ばれていました。また、炎症を抑える効果があるため、アンデスの人々は喉の痛みや外傷を直す治療薬としても使用していました。

 

紹介レシピ:キヌアのサラダ

 

 インゲンマメ

インゲンマメ(Phaseolus)はマメ科の一年草で中央アメリカ原産の野菜です。さやの中にたくさんの種がなり、豆として食べられています。インゲンマメは、8千年以上前にペルーやメキシコで栽培されていました。また、インカの人々は食糧貯蔵庫にインゲン、トウモロコシ、トウガラシなど、たくさんの食料を保管し、必要に応じてそこから取りだし使っていました。

 

紹介レシピ:インゲンとタマネギのサラダ

 

亜.汽張泪ぅ

サツマイモ(Ipomoea batatas)は、サツマイモ属の塊根植物の野菜です。色は紫、黄色、白など、種類によってさまざまです。ぺルーで、約1万年前のサツマイモの一部が発見されています。また18世紀には、ヨーロッパ人がポリネシアでサツマイモを発見しました。彼らがヨーロッパにサツマイモを持ちこんだのか、それ以前に、すでにヨーロッパにもちこまれていたのかは、いまだに分かっていません。サツマイモは焼いたりふかしたりゆでたりなど、さまざまな調理法が存在しますが、昔は、かゆみどめや髪の毛の染料としてもつかわれていたのです。

 

紹介レシピ:焼きイモ

 

院.ムの木

ガムは、サポティラの木の樹液からとった植物樹脂、チクルからできています。熱帯アメリカが原産で、中央アメリカに住む先住民が噛んでいたのが起源といわれています。1859年、はじめてチューインガムは商品として出まわるようになりました。さいしょ味がないものでしたが、その後、甘味のあるミントやフルーツ味のチューインガムが売られるようになったのです。

 

紹介レシピ:チューインガムのふくらましかた

 


■ エピソードの一部


トウガラシ 


コロンブスのかんちがい

だれにでも、まちがいはあるもの…。さいしょにトウガラシを広めた人物は、新大陸を発見したクリストファー・コロンブスでした。コロンブスはトウガラシを見つけたとき、これを「インドのコショウ」とかんちがいしてしまいました。考えてもみてください。それまでヨーロッパ人は、トウガラシを見たこともなかったのです。その後もヨーロッパでは、「チレ」という呼び名はトウガラシのことではなく、ピーマン、パプリカ、コショウ、ペペローニの名前として広まっていきました。


         ・・・・・

 

香辛料の治療

メキシコの先住民は、トウガラシをぬり薬やさまざまな治療薬としてつかっていました。たとえば咳どめには、トウガラシの入ったハーブティーを飲んだり、耳の炎症には、トウガラシの入った点耳薬をつくったりしていました。また舌の傷には、トウガラシと塩をまぜた薬をぬったりもしていたのです。さらに虫歯による歯の痛みをおさえる薬にも、トウガラシがつかわれていたのです。

 

トウガラシは強力な武器

トウガラシが武器になるかもしれない。そんなふうに考えたことはないですか?じつは、アステカ族の人々は、トウガラシを武器としてつかっていたのです。トウガラシの特性をうまくつかい、敵から身をまもる手段として、トウガラシを利用しました。たとえば、トウガラシを焼き、その煙で敵を息苦しくさせたと言われています。また、子どものお仕置きに、トウガラシの焚き火の煙を吸わせるという方法もつかわれていました。

 

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カカオ

 

チョコレートは王家の飲み物

マヤ族はカカオ豆から苦い飲み物をつくり、国王や王家の一族のためにささげていました。国王たちは、この飲み物を装飾入りの高価な容器に入れて飲んでいました。

 

コロンブスは、初めてカカオ豆を発見したヨーロッパ人だと言われています。しかし、チョコレートとよばれる飲み物を初めて飲んだのは、メキシコの征服者であったヘルナン・コルテスでした。この飲み物は、炒ったカカオに、水とトウモロコシの粉とトウガラシを加えてできたものでした。コルテスがこのチョコレートを気に入ったかどうかは分かっていません。いずれにしても1544年に、マヤの王族たちが貴重な品々といっしょにチョコレートをヨーロッパに持ちこんだと言われています。いっしょに持ちこんだ品々の中には、ケツァールの鳥の羽根、トウガラシ、トウモロコシなども入っていました。

 

チョコレートの通貨

アステカ族だけでなく、マヤ族たちもチョコレートを飲んでいました。そればかりか、カカオ豆は通貨として使用され、カカオ豆で商品を買うことができたのです。たとえば、ウサギ一匹の値段はカカオ豆30個分、アボガドはカカオ豆3個といった具合でした。カカオ豆はとても貴重だったので、ほかの種に土をまぶした、にせものが出まわることもありました。さて、みなさんも想像してみてください。買い物をたのまれたときに、チョコレートのお金をわたされたらどうしますか?つい、食べてしまうかもしれませんね。

         ・・・

 

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チリの昔ばなし 『にげろ!トルティーヤ』
 

にげろ!トルティーヤ


■原題:  La Tortilla Corredora

■作: ラウラ・エレーラ(Laura Herrera)、 
絵: スカーレット・ナルシーソ(Scarlet Narciso


■出版社: エカレ社(Ediciones Ekare


■発行年: 2010


 

― おむすび ころりん すっとんとん ころころころりん すっとんとん―

 

リズミカルな文体やくりかえしの表現が魅力の昔ばなし「おむすびころりん」。小学校1年のチビが、音読の宿題で歌いながら読んでくれました。小学校の新学習指導要領の改訂で「生涯にわたって古典に親しむ態度を育成する」ために、こうした古典や民話が重視されているようですね。

 

ところで、「おむすびころりん」は転がったおむすびを追いかけたおじいさんが、穴に落ちてネズミたちに出会い、こづちをもらって幸せにくらすおはなし。では、ほかの国でも、これに似たおはなしはあるのでしょうか…?

 

どうやら海外では、おいしそうな食べ物が主人公で、食べられそうになりながらも必死で逃げるというお話がたくさんあるようなのです。例えば、欧米で有名なのが『ジンジャーブレッドマン』。オーブンで焼かれていたにんぎょう型のしょうがクッキーが、オーブンから飛び出して逃げ出すおはなし。日本では『しょうがパンぼうや (福音館書店)』が邦訳されています。また、ロシアの民話で『おだんごパン(福音館)』というのもあるようです。設定こそ違いますが、内容や展開はとてもよく似ています。日本では、おむすびがころがるという受身的なものなのに対して、海外では、食べ物が自らが逃げる!というところがなんとも文化の違いを感じますね。

 

そして、ラテンアメリカにも同じようなおはなしがあります。今回は南米チリの昔ばなし『にげろ!トルティーヤ』のご紹介です。

 

ちなみに、トルティーヤとは、トウモロコシの粉でつくった伝統的な薄焼きパンのことです。


 

■ あらすじ


ある日、おなかをすかせた7人の子どもたちのために、おかあさんがトルティーヤをつくりました。こんがりとやきあがったおいしそうなトルティーヤ。でも、おかあさんがトルティーヤを火からとりだしたとたん、トルティーヤがするりとおかあさんの手をすりぬけて、にげだしたのです!はしる!はしる!トルティーヤ!あとから、お母さんと7人のおなかをすかせた子どもたちがトルティーヤをおいかけます。とちゅうで、ニワトリ、ウシ、イヌ、そしてブタに出会い…。さてさて、トルティーヤの運命はいかに…!?

 

最後は、ブタに食べられておしまいという結末が一般的なのだそうですが、この絵本はちょっとちがいます。なんと、トルティーヤはとうとう逃げきってしまうのです。夢を果たし、世界中をめぐるトルティーヤ!なんとも楽しい結末です。

 

なお、イラストを担当しているスカーレット・ナルシーソは、北米のカルフォルニア州のバークレーに在住のベネズエラ人アーティスト。水彩、アクリル、鉛筆を駆使したアナログ技術とデジタル技術とを上手く組みあわせ自然なイラストに仕上げています。



■ おはなしのいちぶ


むかしあるところに、おかあさんと7人の子どもたちが くらしていました。

子どもたちは、とてもおなかをすかせていました。


ある日、おかあさんは おいしそうなトルティーヤをつくろうと、すみ火のうえにトルティーヤをおきました。


7人の子どもたちは、トルティーヤを じっとみていました。
トルティーヤも、7人の子どもたちを じっとみていました。


トルティーヤができあがりました。おかあさんがトルティーヤを火からとりだし、ハンカチでつつもうとしたそのときです。トルティーヤがするりとおかあさんの手をすりぬけて、にげだしたのです!


・・・・・・


ちょうどそこへ、ニワトリがあらわれました。

―そんなにいそいで、どこへいく?おまえ、うまそうだな―


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| 21:43 | スペイン語の本 Libros españoles | comments(2) | trackbacks(0) |
絵本 星の王子さま

絵本 星の王子さま

サン=テグジュペリ作・絵

池澤 夏樹 訳
出版社:集英社

出版年:2006

 

−大切なものは、目にみえない−

かつて自分だって子どもだった。いつだって、その心を忘れないようにしたいもの。でも気づくと、いつも「はやく、はやく」と大人の時間にあてはめて、子どもをせきたてている…。

 

そんな日常をふと立ち止まって考える絵本。それが『星の王子さま』かもしれない。このおはなしを、子どもといっしょに読めるとは、なんてぜいたくなんでしょう!

 

あらすじ
パイロットの「ぼく」の飛行機が、アフリカのサハラ砂漠に不時着した。手元にはわずかな水しかない。はやく飛行機を修理しないと…。そんなあせる「ぼく」のもとに、ひとりの少年があらわれた。少年は小さな星からやってきた王子さまだった。

 

王子さまはじぶんの世話していたバラとケンカになり、しばらくじぶんの星をはなれて旅へでた。そして、いろいろな星の人たちと出会う。命令好きな王様、うぬぼれ男、酒飲み、ビジネスマン、点灯夫、地理学者、そして7番目の星…地球に到着する。

 

そこでまず、王子さまはヘビに出会った。それから5000本のバラに出会った。王子さまは、じぶんの星のバラは世界で1本しかないとくべつな花だと思っていた。でも、ふつうの花だったと知って悲しみにくれる。

 

そのとき、王子さまのところにキツネがあらわれた。仲よしとはとくべつなこと、ゆっくり時間をかけて、とくべつになるんだと、キツネは言った。王子さまは、じぶんの世話したバラは、じぶんにとってとくべつなバラで、あのバラだけがじぶんのバラなのだと気づく。キツネは別れるときに、大事なことをおしえてくれた。

 

「ものは心で見る。かんじんなことは目では見えない」

 

飛行機が砂漠に落ちて8日目、とうとう飲み水がつきてしまう。「ぼく」と王子さまは、井戸をさがしにでかける。そして明け方、ほんとうに井戸がみつかった。そのとき、王子さまは地球に来て明日で1年になると「ぼく」に言った。1年前、王子さまの星がちょうど真上を通ったこの場所で、ヘビにかまれることで、王子さまはじぶんの星に帰れるのだとも。

 

「これから星空をみるたびに、きみはぼくの笑い声を聞くよ。ぼくときみはずっと友だちだよ」王子さまはそう言って「ぼく」と別れ、ヘビにかまれて、砂の上にゆっくりとたおれた。



感想
『星の王子さま』の本は、私が小さい頃に家の本棚にありました。絵に魅かれて読んだのは、確か小学校の高学年の頃。でも、正直よく分からなくて、最後まで読み通せませんでした。その後、高校でもう一度読んでみましたが、やはり途中で挫折…。社会人になって数年後、ようやく読了。その後読むたびに、言葉の重みがしみこんでいくような作品です。

 

訳者の池澤夏樹さんによると、この本は幼い子でも読めるように配慮した特別版なのだそうです。「このすばらしい本と間違いなく出会えるように」という願いが込められています。

 

子どもを意識した翻訳が、すばらしいのでしょう。本来の『星の王子さま』を読んだ時と世界観が変わらないように思います。言葉はやさしく、みじかく、さらにダイレクトに心に響いてきます。

 

星好きのチビ1には、ゾウをのみこんだヘビのおはなし、ヒツジの絵の場面、バラとのやりとり等、ところどころ心に響くところもあったようです。時々、手にとってもらえたらと思います。いつか『星の王子さま』の本と、まちがいなく出会えるように。私のように遅すぎないように…。

 

  
| 00:24 | 日本語の本 | comments(4) | trackbacks(0) |
ずーっと ずっと だいすきだよ




ずーっと
ずっと だいすきだよ

 

ハンス・ウィルヘルム作・絵

久山 太市訳

出版社:評論社

出版年:1988年



あけましておめでとうございます。

冬休み、チビが読んでくれる教科書の音読の宿題『ずーっと ずっと だいすきだよ』に不覚にも泣いてしまうのは、たどたどしい子どもの声があまりに直球に心に響くからなのか、それとも私がただ単に年をとったからなのでしょうか…。



あらすじ

エルフは 世界一すばらしい犬。「ぼく」とエルフは、いっしょに大きくなりました。でも、いつしか時がたち、エルフは年をとり、ねていることが おおくなっていきます。「ぼく」は、しんぱいでたまりません。でも、じゅういさんにも できることは なにもないのです。

 

ある朝、エルフがしんでいました。みんな ないて かたをだきあいました。「ぼく」だって、かなしくてたまりません。でも、いくらか きもちがらくだったのは、まいばん エルフに 「ずうっと だいすきだよ」っていっていたから…。

 

感想

死をテーマにした絵本であり、また、生を全うすること、そして愛することの大切さを実感する絵本です。

 

死について学ぶことを、「死生学」というそうです。アメリカでは1960年代後半から「死生学(デス・エドゥケーション)」が行われているそうです。日本では、上智大学教授のアルフォンス・デーケン氏が、1980年頃から「死の準備教育」を提唱しています。デーケン氏によると「死を見つめることは、生を最後までどう大切に生き抜くか、自分の生き方を問い直すことだ」と唱えています。

 

では、子どもにとっての死とは…?

それは身近な親族の死であったり、飼っている大事な動物であったりと、子どもにも何らかの形で死は必ず訪れます。その時「眠っている」や「行ってしまった」などの説明は、曖昧で場合によっては嘘になるかもしれません。56歳の子どもには死という存在そのものよりも、何が起きたのか知りたいという気持ちの方が強いそうです。さらに10歳前後になると、死への恐怖が芽生え始め、死にたくないという思いが強くなるのだそう…。

 

いずれにしても、その年代にあった言葉を選ぶこと、説明が過ぎたり、医学的あるいは哲学的な説明は避けること。愛する人を亡くして辛い思いをしながらも希望を持って生きるという姿勢を示し、身近な人の死に対する悲しみを見せることが大切なのだそうです。

 

以上のことを教えてくれたのが、

『EL BUEN ADIOS 2009エスパサ・カルペ社) 』 という本。

作者:ヘスー、ポベダ/シルバ・ラフォーレ

 

以下、その本の一節で、心にしみわたるような言葉がいくつか書かれています。

 

・・・・

「きっとこれは明らかなサイン。毎日が最初で最後、あるがままに一生懸命に生き、そして愛するべきなのだ。一瞬一瞬を大切に、できる限りのことをしながら。すると、死はあらゆる角に潜んだ脅威ではなく、人生が喜びに満ちた素晴らしい贈りものなのだと感じることができるだろう(著者ヘスー、ポベダ、本書から抜粋)」

 

 

「愛こそが人生を豊かにし、道を正す。愛について学ぶと翼が与えられ、人生の最期を冷静に過ごすことができる。愛を前に死は退散し、永遠に敗北する(著者ヘスー、ポベダ、本書から抜粋)」。

 

 

「愛、健康、平和、宗教心、文化、友人、安定した財政、心の安定、私たちはみんなこれらをすでに持っているのです。なのに、どうして持っていないものにそれほど執着するのでしょうか?死について考えることは、生きるよろこびを知ること。今ここにいる幸運に気づくことです

(プロローグを執筆したアレハンドラ・バジェホ−ナヘラ女史の言葉)出版会見にて

| 11:21 | 日本語の本 | comments(0) | trackbacks(0) |
スペインのアートな絵本―レッド・ブック―


  『いかないで…』



■原題
No te vayas


カタリーナはさよならがきらい。でも、さよならのむこうには、すばらしいものが待っている。それを教えてくれる絵本です。赤を基調にしたスペインのアートな絵本、レッドブックの紹介です。


作者

文: ガブリエラ・ケセルマン(Gabriela Keselman) 

1953年、アルゼンチンのブエノス・アイレス生まれ。スペインに在住しながら、児童文学界で活躍中。今まで出版した本は50冊以上。邦訳絵本には『ねむれないの、ほんとだよ(2007 岩波書店)』、2006年スペインのアペル・メストル賞受賞作品『100回いったでしょ!(2009 講談社)』がある。


: ガブリエラ・ルビオ(Gabriela Rubio)

1966年、スペインのカナリア諸島生まれ。作家兼イラストレーター。邦訳絵本に『ペペおじさんとゆかいないぬ(2008 学研ワールド絵本)』がある。


出版社:Kokinos


発行年: 2009


あらすじ

カタリーナは、さよならがきらい。それは、おひさまが しずんでしまうこと。ゆきであそべる ふゆがおわってしまうこと。ふうせんが、とんでいってしまうこと。さんりんしゃに もう のれないこと。おやすみのとき、パパがへやからいってしまうこと…。


でも…おひさまがしずむまで、おつきさまは やってきてくれない。ふゆがおわらなければ、はるはこない。ふうせんが とんでいってしまっても、だいすきなペットのいぬと あそんだり、さんりんしゃとおわかれしても、こんどは じてんしゃにのって すいすいおでかけできる。そして、おやすみのあと、おわかれしたものたちが、ほら、すぐそこにいて、みんなで あたたかくみまもっていてくれる…。


■感想

赤を基調に、絵筆で描いた太く黒い線画、そしてポイントにゴールドが使われているアートな大型絵本です。おひさまがしずみかける夕方、さよならがきらいなカタリーナは「いかないで…」と、おひさまにむかって、せいいっぱい 手をひろげて おねがいします。でもね…とページをめくると、見開きのページいっぱいに、カタリーナが木の上に座りながらお月さまをながめている絵があらわれます。言葉はなく、大胆な赤と黒の色づかいがとても美しい。赤い色って、こんなにもせつなくて、あったかいんですね。


別れは、いつも胸がチクンといたんだり、ときにはりさけそうになったり、ズシンと重くのしかかられるような痛い思いをするもの。でも、その後には、かならず新しい出会いが待っているのだと、この絵本は気づかせてくれます。


大好きなスペイン語のことわざで、 “No hay mal que por bien no venga ”という言葉があります。悪いことの後には、必ず良いことがある。つまり、朝の来ない夜はない、失敗は成功のもとといった感じでしょうか…。今年もあとわずか、いろいろなことがありましたが、明日を信じて、また来年もがんばりたいと思います。


¡Feliz Navidad y Próspero Año Nuevo!




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■おはなしのいちぶ


カタリーナは、さよならがきらい。


むねのおくがチクリといたむ。


おなかにハチがいるみたい。


たまらなくなって、おひさまに おねがいしてみたくなる。


 

いかないで…


 

すると、おひさまは ますますひかりをはなって、


カタリーナに ひのひかりを プレゼントしてくれる。


でも、そろそろ いかなくちゃ。


だって…



・・・・・


 

(木の上にすわって、うつくしいお月さまをながめているカタリーナの絵)



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カリビアンテイストあふれる絵本
 

ママのうたで ふわふわりん

 

原題 《Floating on Mama’s Song Flotando en la canción de mamá》 

 

 

作者

文: ラウラ・ラカマラ Laura Lacámara

: ユーイ・モラレス(Yuyi Morales

 

出版社: ハーパーコリンズ児童書部門 HarperCollins Children's Books

インプリント: キャサリン・テーヘン・ブックス (Katherine Tegen Books 

 

発行年: 20108

 

あらすじ

アニータが7歳の誕生日に学校から家にもどると、ママがオペラの歌をうたいながら、宙にふわふわとういていたのです!庭には、愛犬のティトまでもふわふわりん。「歌うたびに、体がういてしまうの!歌をうたうのが、ただ楽しくて!」アニータのママは、おどろきながら言いました。そしてアニータも、ママの歌をきいたとたん、ふわふわと体がうきはじめます。ふたりは、この不思議なできごとが楽しくてしかたがありません。

 

ところがアニータのおばあちゃんは、いい顔をしませんでした。口うるさい近所の人たちも、自分たちの家のブタやヤギやウシが、アニータの家の近くでふわふわと浮いているのを見つけ、文句を言いにアニータの家にやってきました。アニータのおばあちゃんはママに歌をやめさせますが、ママは歌をうたわなくなってからすっかり元気をなくし、笑わなくなってしまいます。すると、近所の牛はミルクが出なくなり、豚はえさを食べなくなり、ヤギは眠らなくなってしまいました。

 

みんなが悲しみに暮れる中、ある日アニータは、おばあちゃんの部屋で一枚の昔の写真を見つけます。それは、マンゴーの木の上にひっかかった一頭の牛の写真でした。おばあちゃんは写真を見ながら、アニータとママに本当のことを話しはじめます。実はアニータの家系の女性はみんな、代々歌をうたってきたのです。彼女たちには、歌を通じて聞くものをみんな宙にうかせてしまうという特別な才能が備わっていました。ただし最初に産んだ娘が7歳にならないと、その力は発揮されないのです。

 

おばあちゃんは、自分の歌がひきおこした事件が近所の人に知れるのを恐れて、歌をうたうことをやめてしまいました。「歌をやめてから、私の心は苦いグレープフルーツのようだわ」おばあちゃんは、正直に自分の気持ちを打ち明けてくれました。アニータは、もう一度おばあちゃんに楽しんでもらいたくて、おばあちゃんの前で歌をうたいはじめます。アニータのへんてこな歌に、おばあちゃんも思わずにっこり。はじめは鼻歌で、しばらくするとしゃがれ声で、ついに、おばあちゃんは歌をうたいはじめます。そのやさしい歌声とともに、アニータとおばあちゃんはふわふわと空中にうかんでいきました。すると、ふたりを見ていたママも、ついに笑顔をとりもどします。ママの声は滝のようにいきおいよく流れだし、美しい歌声になりました。高い声がひびきわたると、ママもおばあちゃんもマンゴの木のてっぺんにとどきそうなほど、ふわふわと浮いていきました。

 

それから、ママは毎日歌をうたっています。ママが歌をうたうと、家族はみんな最高に幸せな気分。ママの歌でふわふわりん!

対象年齢:48歳)

 

■書評 

 

Publishers Weekly-Starred review:

ラカマラのデビュー作は、ちょっとかわった家族の物語です。お話のナレーターであるアニータが、7歳の誕生日をむかえた日のことでした。音楽を愛する気持ちが、アニータの家族に不思議な魔法をひきおこしたのです。アニータが家に帰ってくると、ママが歌をうたっていました。それは、ふだんと変わらない光景。そう…ママが歌をうたっているあいだ、ママと愛犬のティトが空中に浮いていることをのぞいては…。このふしぎなできごとに、アニータとママは大よろこび。でも、アニータのおばあちゃんと近所の人たちはいい顔をしません。とうとうアニータのママは、二度と歌をうたわないように約束させられてしまいます。でも、歌をうたえないことがあまりに悲しかったので、アニータのママは心をいため、笑顔が消えてしまいます。なんとかママに元気を取りもどしてほしいと願うアニータは、いろいろ手をつくし、ついにある秘密を知ることに…。モラレスの光沢感のあるアクリル画には、茶目っけたっぷりな魅力があふれ、家族の温かな絆と音楽がもたらす喜びがあらわれています。

 

Booklist

英語とスペイン語のバイリンガル絵本『ママのうたでふわふわりん』の中で、モラレスが描くふっくらとした容姿の人物たちは、見た目の重さとはうらはらに、みんなふわふわと宙に浮いてしまいます。淡い金色をハイライトにした鮮やかな色彩が、丸みのある丘や木の枝などにとけこみ、見事な調和を見せながら話が進むにつれ、魔術的レアリズムを完成させているのです。

―以下、あらすじのため省略― 

 

Library Journal:

―前半はあらすじのため、省略―

故郷であるキューバのルーツと、幼少期に聞いた母親のオペラの歌からインスピレーションを得たラカマラのデビュー作は、カリビアン・テイストが盛り込まれた作品になっています。モラレスの明るく元気な色彩のコラージュ画は、ふっくらとした温かみのある人物たちと、実際の写真やデジタル加工した観葉植物などが見事にとけあった仕上がりになっており、子どもの想像力をかりたてる作品になっています。

 

■感想

ラテンアメリカは様々な人種が混ざっている国々です。それゆえに、文学界において豊かな感性の本が多く出版されています。上記の書評にもあるように、『魔術的リアリズムMagischer Realismus』といった日常と日常が融合している作品は中南米の作家が描く魅力の一つですが、この絵本もまた、その中の一冊だと思います。キューバ出身の新人作家ラウラ・ラカマラの民話的テイストを盛り込んだテキストに、プーラ・ベルプレ賞の最多受賞者である画家ユーイ・モラレス(メキシコ出身)の絵の魅力が見事に調和しています。

 

この絵本は、キューバ出身の作家が、家族の絆や音楽のもたらす喜びといったラテンアメリカならではの魅力を民話テイストを盛り込みながら、それでいて誰もが共感できる話しになっているところが大きな魅力の一つです。

 

揚げバナナ、黒豆、ヤシの実、マンゴーの木…。これらはどれもカリビアン諸国の香りを伝える上で欠かせないものばかりです。そして音楽―。ラテンアメリカは音楽なしには語れないほど、街のあちこちで音楽が流れています。日常に音楽が寄りそい、音楽のもたらす喜びを誰よりもよく知っていて、それをサルサやメレンゲといったダンス(今回はFloating)といった形で体を使って表現できる人々の暮らす国なのだと思います。

 

この作品を読んだ後、ふと、画家マルクシャガールの一枚の絵を思い出しました。それは、シャガールと奥さんのベラが街の上を漂い空を飛んでいる絵です。幸せの絶頂を表現しているそうですが、人は本当に幸せを感じる時、うれしくて空を飛ぶのかもしれませんね。

 

そして最後に、おばあちゃん、母親、娘アニータの親子3世代にわたる家族の強い絆も、また、この作品の大きな魅力です。子どもを愛する母親の無償の愛についてはもちろん、子どもまた、無償の愛で母親を守ろうとしているのだと気づかされます。相手を思いやる気持ちにあふれた愛情たっぷりの絵本です。

 

作者について

文:ラウラ・ラカマラ(Laura Lacámara

キューバ生まれの作家兼イラストレーター。カルフォルニア州立大学で美術を専攻。仲間のアーティストの勧めで、アート・デザイン・オーティス・カレッジで子ども向けの絵本のイラスト講座を受講する。その中で生まれた作品が『Floating Mama’s Song』である。幼少期に聞いた母親のオペラからインスピレーションを得たラカマラのデビュー作は、カリビアン・テイストが盛り込まれた作品になっている。

 

本作品の受賞歴

2010年秋 Junior Library Guild Selection受賞作品

20112012Tejas Star Book Award 最終候補作品

 

作品歴(いずれも未邦訳)

2010 Floating on Mama's SongFlotando en la canción de mamá』の著者

2010The Runaway PiggyEl cochinito fugitivo』イラスト担当

2012年出版予定『Alicia’s Aguas Frescas』イラスト担当 

 

 

イラスト:ユーイ・モラレス(Yuyi Morales

1968年メキシコ生まれ。作家、人形作家、ダンサーなど、マルチタレントなイラストレーター。25歳までメキシコで育つ。1995年にアメリカへ移住し、現在はカリフォルニアに在住。

 

受賞歴

2004年『Harvesting Hope: The Story of Cesar Chavez』プーラ・ベルプレ賞(画家部門)オナー作品

2004年『Just a Minute!』プーラ・ベルプレ賞(画家部門)受賞作品

2008年『Los Gatos Black on Halloween』プーラ・ベルプレ賞(画家部門)受賞作品

2009年『Just in Case』プーラ・ベルプレ賞(画家部門)受賞作品

2010年『My abuelita』プーラ・ベルプレ賞(画家部門)オナー作品

 

作品歴(いずれも未邦訳)

2003年『Harvesting Hope: The Story of Cesar Chavez

2003年『Just a Minute!

2004年『Sand Sister

2006年『Los Gatos Black on Halloween

2007年『Nochecita/ Little Night

2008年『Just in Case

2009年『My abuelita

2010年『Floating on Mama’s Song/Flotando en la canción de mamá

2011年『Ladder to the Moon

2012年出版予定『Georgia in Hawaii: When Georgia O'keeffe Painted What She Pleased

 


■おはなしの一部

 

ママは、うたうのがだいすき。まいにち、こんなにたのしいのは、ママのうたのおかげ。

でも、わたしの7さいのたんじょうびから、なにもかもかわってしまった。

 

そのひ がっこうからかえると、あげバナナとくろまめのおいしそうなにおいがただよってきた。ママが、おきにいりのオペラのうた「カルメン」をうたってる。いそいで だいどころへいってみたら、びっくりしてかたまっちゃった!

ママが くうちゅうにふわふわういてる!そとでは、いぬのティトも ふわふわりん!

 

ママがうたうのをやめたとたん、ドシンと ゆかに おとをたてておちた。

ドーン!ティトも おっこた。

「ママもティトも、ふわふわ ういてたわ!」 わたしは、おもわず こえをあげた。

「そうなのアニータ。うたうたびに からだがういてしまうの!うたうのが、ただ たのしくて!

ティトも きにいったみたい」 ママは わたしをぎゅっとだきしめてくれた。わたしたちは、いっしょに わらった。

ママがうたうと、こんなにすてきなことがおこるなんて!おばあちゃんは、しってるのかな?おとうとのオーランドは?


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エリックカールさんのタツノオトシゴのおはなし
 


とうさんはタツノオトシゴ


エリックカール 著

佐野洋子訳

出版社:偕成社

出版年:2006


あらすじ

タツノオトシゴの とうさんと かあさんは、うみを ゆらゆらおよいでいました。ある日、「たまごがうみたい」というかあさんに、とうさんは「ぼくにまかせて」とこたえます。そして、かあさんは とうさんのおなかのポケットに、そっと たまごをうみおとしました。


タツノオトシゴのとうさんは、たまごが あかちゃんになるまで、しっかり まもりつづけます。とちゅう、トゲウオ、ティラピア、コモリウオ、ヨウジウオ、そしてアメリカナマズに
であいます。なんと、みんなこれらのさかなは、とうさんさかなが こそだてをしているのです。「かんしん、かんしん」、「なかなか りっぱだよ」。そんなことばを  ほかのさかなたちにかけながら、ようやくこどもたちが、うまれるときがやってきました。


とうさんのポケットから、たくさんのこどもたちが、すだってゆきます。でも、いっぴきだけ、もどってくるあかちゃんがいました。とうさんは、こたえます。「だめだめ。とうさんは、きみが
だいすきだけど、きみは もう りっぱな タツノオトシゴなんだ」 


感想

『はらぺこあおむし』でゆうめいな、エリックか―ルさんの2006年に出版された絵本です。なにより、色がきれいですね。ところどころに、透明シートの仕掛けが設けられていて、それをめくる瞬間も、これまた楽しい。子どもの絵本をいっしょに買いにいったのに、私がひとめぼれして買ってしまいました。文章が味わいたっぷりでおもしろいのは、訳されたのが絵本作家の佐野洋子さんだからでしょうか。「にょうぼうが〜」なんていうところが、いいなあと思ってしまう。でも、子どもに「にょうぼうってなあに?」と聞かれ、そうか、子どもは知らないよなあ…と。でも、子どもの本だからと、無難な言葉にしてしまうのではなくて、「にょうぼう」なんて言葉が入っているのも 人間くさくて(さかなの世界のおはなしですが…)いいものだなあと思いました。


子育てパパが多い時代になって、「イクメン」なんて言葉も数年前から言われています。子育てに参加しているお父さんには、この絵本は自然に受けいれられるでしょうね。そういう意味では、とても現代風のおはなしです。


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アンデスの素朴な少女の勇気あるおはなし

 

コンドルと3人の子どもたち

原題:Tres niños y un condor

 

■ 出版社:

グルーポ アナヤ社 幼児・児童書籍部(スペインの大手出版社アナヤグループ)            

Grupo Anaya S.A. Departamento Anaya Infantil y Juvenil

 

 発行年:200911

 

 

せっかくの読書の秋なので第2弾です。

アンデスの暮らしぶりが伝わる、素朴な少女の勇気あるおはなしです。

 

 

■ おはなしの紹介

スペインの児童文学紹介専門サイト 「S.O.L

コロンビアのアンデス山脈にあるプラセ火山のふもとで、コンドルのを見つけ世話をすることになった3人の子どもたちに巻きこる波乱の出来事を語った物語。また、この作品は絶滅の危機に瀕しているコンドルの狩猟が無差別に行われていることに対する告発でもある。狩猟が行われた後、マリアナとニコラスはコンドルの雛を連れて帰り、この雛を『ピフォ』と名づけ、独り立ちできるまで世話をすることに決める。しかし、“やつら”がピフォをつかまえて、サーカスに連れていこうとしていた…。(読書補助教材として付録冊子付き)。

 

(裏表紙より)

マリアナとニコラスは桑の実をさがしに出かけたところ、狩猟家たちが山の絶壁に狩りにやってくるのを見かけました。2人は木の陰にかくれ、2羽のコンドルが銃でち殺されてしまうのを目撃してしまいますが、結局はどうすることもできませんでした。次の日、2人がふたたび同じ場所を訪れると、草の茂みの間に一羽のコンドルのひなが声をかぎりに鳴いているのを見つけます。どうやら前日の狩猟で殺されてしまった親コンドルのひなのようでした。もはや身よりのないひなを放っておけず、2人は友人のセバスといっしょにに、コンドルのひなが立派に巣立ち、アンデス山脈に広がる青い空へ飛びっていける日まで、ひなを育てようと決心します。たとえどんなことがあろうと、守ってあげられるその時まで…。

 

本書は、作者エラディオ・バルデネブロが実話をもと書いた作品で。アンデスの少女がコンドルのひなを救うために様々なことを試み、この絶滅の危機にひんしている鳥のひなを立派に成長させ、自由な外の世界へ帰そうと決意しますそして読者が物語にスムーズに参加できるように、レティシア・ルイフェルナンデスのイラストが、プラセ火山のふもとへと私たちを導いてくれるでしょう。

 

 作者について:
文:エラディオ・バルデネブロ(Eladio Valdenebro)

1945年コロンビアのポパヤンで生まれる。建築家として、現在もカウカ川岸の自然公園の大規模な都市計画に携わっている。1997年から執筆活動を開始し、自然保護をテーマにした作品を手掛けている。2006年、自然環境をテーマにした大人向け小説 『密林の年代記(未訳)(Crónicas de selva)』で、ユーソスター賞を受賞。

主な作品:少年トニョ シリーズ(いずれも未訳)
『トニョと森(Toño y el bosque)』(1999)
『トニョと自由をうばわれた動物たち(Toño y los animales cautivos)』(2001)
『トニョと少女とコンドル(Toño, la niña y el cóndor)』(2002)

絵:レティシア・ルイフェルナンデス(Leticia Ruifernandez
1976年スペインのマドリッド生まれ。イラストレーターとして、水彩画を中心に子ども向けの児童書の挿絵を数多く手掛けている。アリカンテ市絵本挿絵国際コンクール受賞(2006年)、グランカナリア島議会主催 図書館絵本挿絵国際コンクール次点(2008年)。

 

■ おはなしの一部

「しずかに!動かないで…聞こえる?」

「うん、なんだろう?ウサギかな?」

「ちがうわ!そんなわけない。だって、ウサギは鳴かないもの。思うんだけど…、きっと、そうだわ…。昨日、親が殺されたんだわ…。銃を持ったあいつらのせいで…。ねえ、聞こえる?この辺から声がするんだけど…。そこの木の…。気をつけて!…あっ、そこにいた!」

 

 こうして、兄ニコラスと妹マリアナは、草の茂みにいたコンドルのひなに出会いました。このひなには親がいません。前の日、見知らぬ男たちがやって来て、この辺りでコンドルの狩りをしたのです。近くには、農夫の子どもであるマリアナとニコラスの家がありました。

「かわいそうに。こんなにふるえて!」

「でも…、すごいへんな顔してるな!ボサボサの毛だし…、口が牛の鼻みたいにでかいぜ。マリアナ、こいつすごいぶさいくだな。それに足はひょろっこいのに、指がすごくでかい…」

「ニコ!なんてこというの!この子、ただおびえてるだけじゃない。親がとつぜんいなくなってしまったんだもの…。かわいそうに…」

 少女は赤いポンチョをぬぐと、まるめて巣のような形にしました。そして、コンドルのひなを持ちげると、ポンチョでつくった巣の中につつみこむようにそっと入れてやりました。コンドルのひなはだんだん落ちいてきたものの、まだ小さな声で鳴きつづけていました。

「ほらね?もう落ちついてきたわ…。でも、この子を家に連れてかえりましょ。そうしないと、ここで死んじゃうもの。このまま草の中に置きざりにしたら、寒さでこごえ死ぬか、そうでなければ、キツネがやって来て食べられちゃうかもしれない…」

 

 こうして、この物語は始まります。お話の舞台はポパヤンの町の近くにある、プラセ火山のふもとにある小さな町です。お話は全部で5つの章に分かれています。

 

1章は、主人公であるマリアナ、ニコラス、セバスチャンの3人について語ります。また、この物語の舞台となっている場所の説明もしています。

 

2章は、コンドルのひなを発見したマリアナが、どのようにして親のいないひなを育てていくのか。また、このひなが大人になった時、野生のコンドルと同じように生きていけるようにどんな準備をしていくのか。これらについて、話が進んでいきます。

 

3章は、コンドルを育てる子どもたちに起こるさまざまな出来事について、話が展開していきます。

 

4章は、クライマックスの章です。男たちが麻酔銃でマリアナのコンドルを捕まえて、サーカスに送りとばそうとするのです。

 

5章は、最終章で感動的な場面です。3人の子どもたちが力を合わせ、コンドルとその仲間たちを救おうとします。

 

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1章は以下のページで原書をみることができます。

コンドルと三人のこどもたち(pdfファイルになります)
http://www.anayainfantilyjuvenil.com/catalogos/capitulos_promocion/IJ00262501_9999992001.pdf

 

 

■ 感想

『コンドルと3人の子どもたち』は、9〜11歳を対象にした児童向けのお話です。主人公の少女マリアナは、コンドルのひなが野生の鳥として巣立つその日まで、人間に飼いならされることなく自立して生きていけるように手助けをしていきます。少女が一つのことをやり遂げるひたむきな姿勢に心を打たれると同時に、野生動物とのあるべき関係についても問いかける作品です。

 

コンドルはアンデスの神と呼ばれた国鳥で、全長1メートル以上、翼を広げると3メートル以上にもなる世界最大の飛鳥です。威厳あふれる力強いイメージとは裏腹に、一生を一つがいで過ごし、「一羽が死ぬともう一羽も悲しみで死んでしまう(本書より)」そうです。しかし今では、残念ながら人間による無差別な狩猟で、コンドルは絶滅の危機に瀕しています。作者は自然界の調和を乱すこうした行為について、物語を通じて強く警告しています。

 

ストーリーは作者が3人称で語っていきますが、合間には、マリアナの祖母がアンデスの暮らしぶりやコンドルの習性について、都会の少年セバスに語りかけるナレーションを挿入しています。優しく語りかけるような親しみやすさを感じ、この祖母の語りのお蔭で、ストーリーに深みが出ているように思います。また、学校の教材としても使用できるように、読書補助教材の付録冊子もついています。

 

この作品は実話をもとにしているため、コンドルの習性だけでなく、アンデスの暮らしぶりを知る本としても興味深い内容です。最終章では、子どもたちが力をあわせてコンドルを救おうと、果敢に行動する姿が生き生きと描写されています。野生動物のあるべき姿について改めて考えさせられる作品です。

| 23:51 | スペイン語の本 Libros españoles | comments(0) | trackbacks(0) |